「最強ヘッジファンドLTCMの興亡」を読んだ

6 Aug

しばらく前のこの記事はこれを読むのに必要だった用語集。

自分用のまとめを兼ねて概要。

LTCMは1994年に設立されたヘッジファンド。ヘッジファンドというのは、「少数の投資家(個人or機関投資家)からお金を集めて運用して儲ける団体」のこと(らしい)。
LTCMはそのパートナー(「経営陣」でいいとおもう)が有名人ばかりで、後にノーベル賞を取るショールズやマートンなどの有名教授、ウォール街で大儲けしていると評判だったソロモンブラザーズのアービトラージ部門の面々、グリーンスパン議長の後継者候補などがいた。

LTCMのやり方は
・金融工学でモデルをつくって計算して、本来の価値差以上に差が開いている2つの債権その他をみつけ、その2つの価格がいつかは検収する(同じになる)ことに賭ける。
・その構成員に対する社会的信用によって、低金利で資金を借りる
・レバレッジを高くして、収益を何倍かに膨らませる
 (元手で商品を買う。その商品を担保にお金を借りる。借りたお金で商品を買う。その商品を担保にお金を借りる・・・・を何回か繰り返す。ある商品の値段がちょっとでもあがれば、その何倍もの利益を得られる。もちろんちょっとでも下がればその何倍もの損失が出る。)
こうしてお金をガンガン稼ぐ。この方針は成功を収め、営業を開始して4年目には投資金は3倍近くになり、最盛期には運用10兆円以上を運用していたらしい。

だが、98年のロシア危機をきっかけに投資家が新興国市場から資金を引き揚げる。LTCMは金融商品の価格が「いつかは正常値に推移する」ことに賭けているが、市場は時に混乱して価格が適正でなくなる。このとき、LTCMの保持している資産も一時的に暴落する。そこで資金が尽きてしまい、他の金融機関から借り入れに対する証拠金を払えなくなる。しかし、超巨額の資金を運用している会社が潰れれば、大銀行が次々に潰れかねないため、FRB(アメリカの中央銀行)主導で銀行が集まり、共同で救済にあたった。

前半(LTCMの業績が好調なときの話の部分)で、実際には後になって間違いだったと分かる仮定の部分などをわざわざ「こんなはずはなく、後で間違いだと分かるわけだが・・・」という感じで書いている部分が多くて、ちょっとライブ感を損ねてしまっている気がした。他は表現もうまく、特に後半は没頭して読んでしまう感じだった。
物語としてもそれなりに面白いけど、やっぱりノンフィクションなのでこの事件が何を意味しているのかと言うことを考えるのが一番楽しい。

本の中でLTCM崩壊の一番の原因として挙げられていたのは、仮定していた価格変動の確率分布の間違い。LTCMでは市場価格のぶれは正規分布に従うと仮定していたが、現実には異常値(分布の両端)は正規分布よりも多いらしい。ただ、それでもこれらのモデルは一般的なトレーダーの「勘」よりもずっと精度は高かったし(だからこそLTCMは驚異的に高い収益率だった)、これをもって崩壊の原因とすることはできないと思う。それよりはむしろ、「自分たちのモデルが成功したから、自分たちは頭がいい→自分たちの勘は他の人よりもすぐれている」と一部パートナーが考え、きちんとヘッジしないような取引をしたり、普通の水準からは考えられないようなレバレッジをかけたりしたこと、周りの意見を聞かなくなったことなどが原因のように思える。

LTCMを崩壊させたとはいえ、彼らがとても頭が良く天才であることは間違いないと思う(し、一文無しになった様にも言われているけど、資産の大半を失った後でも資産数億円の大金持ち)。ただ、どんなに頭が良くても周り(その「周り」もノーベル賞学者とかなわけだけど)の忠告を聞けないようになってしまったら、どうしても勘違いや視点の偏りを生じてしまい、失敗につながるということだろう。

“最強ヘッジファンドLTCMの興亡 (日経ビジネス人文庫)” (ロジャー ローウェンスタイン)

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